ニュース

  1. ホーム
  2. ニュース
  3. 第68回公開講演会 Q&A集のご紹介

第68回公開講演会 Q&A集のご紹介

2022年03月31日トピックス年会

2022年3月6日、第68回公開講演会がオンラインで開催されました。(詳細はこちら)
全国からたくさんの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。
盛況だった質問コーナーの一部をご紹介いたします。

  1. 尾道の隕石のことを、本田実さんや、広島大学(の先生)がどうやって知ったのでしょうか?
  2. 本田さんや広島大学の先生が佐藤さんのところにやってきて調査されたことは、古い話なので私も存じ上げません。佐藤さんからお話を伺う中で出てきた話です。それにしても一番早くて10年もたって調査に来られたわけですからゆっくりとした話です。

  3. 宇宙の話は子供たちもとても興味を持っている範囲だと思うのですが、内容は難しいこともあるかと思います。科学館で子供向けに宇宙分野の展示や講演会をする際に意識していたことなどがあればお伺いしたいです。
  4. 宇宙に果てはあるか?やブラックホールは?という質問などをよく受けますが、私もわからない内容は、私は「わかりません。君たちが大きくなって勉強して下さい。」と答えるようにしています。つまり逃げるのではなく、わからないことはわからないと答えた方がよいと思います。また子供は聞きかじった知識で質問したりします。そこをよく理解した上で、子供のわかる範囲の言葉でお話をすることが肝要だと思います。一緒に調べてみようね?というような姿勢がよいのかな?と私は考えています。上から目線ではなく、子供と同じ目線でいろいろ工夫・話をしながら考え答えることが必要と思います。

  5. 広島大学の理論研はいつ頃設立されたのでしょうか?また、その設立の経緯をご存じでしたらお聞かせください。また写真には看板が綺麗に残っていましたが、看板は燃えなかったのでしょうか?
  6. 昭和9年広島文理科大学で、理論物理学研究室の三村剛剛昂先生が岩村寅之助先生と共同研究したのがベースとなり、昭和19年に理論物理研究所が作られました。昭和20年原爆により被爆し尾道にあった臨海実験所に臨時に移動、その後昭和22年に竹原に新庁舎を竹原市が建設し寄贈されました。 また看板の件は、毎日新聞社の支局長さんも不思議がられていましたが、爆心はほぼ看板の左後ろ方面になります。門柱の裏側からの爆風になるので直接の被害がなかったのかと思っています。ちなみにこの場所は、爆心から1.7kmの距離になります。高温になった火の玉の範囲の外だと思います。なおここから南約100~200mぐらいまでの範囲の家屋が延焼しています。(直接の被害ではなく、延焼です。)

  7. 銀河中心にブラックホールがあるということが分かったのはガスが吸い込まれている様子もしくはガスが噴出する様子を観測したからですか?
  8. 天の川銀河は星の軌道(ケプラー運動)から、M87銀河はブラックホールシャドウから超巨大ブラックホールの存在が分かっていますが、多くの場合は、超巨大ブラックホールへとガスが吸い込まれることによって生じる大量の光を捉えることで発見されています。ジェットなど、ガス噴出が直接見えている天体もあります。

  9. ブラックホールは三次元空間にあるのに、そのまわりにあるガスは円盤という二次元的な形になるのは何故なのですか?
  10. ブラックホールへと落下するガスはブラックホールに対して運動して(物理の言葉で言えば角運動量をもって)います。すると、ブラックホールへとまっすぐ落ちていくのではなくブラックホールの周りを回転するようになります。そのため2次元的な運動をするようになります。ガス同士の摩擦によって徐々に回転の速度を失うことによってやがてブラックホールに落下していきます。

  11. ブラックホールの中心部は、大きな質量が凝縮しているように思うのですが、物質はどのような状態で存在するのでしょうか。また、ブラックホール内に、物質を無限に詰め込むことが出来るのでしょうか。また、ブラックホールの内部で成立する物理法則は、どのようなものでしょうか。
  12. ブラックホール中心で物質がどのような状態で存在するか、どのような法則が成り立っているのかは分かっていません。原理的にはブラックホールの質量に条件はないので、いくらでも重たいブラックホールを作ることができますが、今のところ見つかっているのは太陽質量の100億倍程度のブラックホールです。なぜそれ以上重いブラックホールがないのかも、重要な研究テーマです。

  13. シミュレーションを行ったときの基礎方程式が気になるのですが、ナビエストークス方程式と放射輸送方程式に、相対論的な効果を入れたような感じなのでしょうか。またブラックホールということで計算上特別なことは行っておられますでしょうか。
  14. 相対論的効果を入れるかどうかは、何をシミュレーションするかに依ります。ブラックホールの極近傍や光速に近くまで加速されるガスなどを取り扱う場合は、相対論効果を考慮することが重要だと考えられます。一方でブラックホールからある程度離れた領域などを扱う場合には、相対論効果を考慮しなくても、現象を記述するのに十分だと考えられます。 計算上特別なこと、と言えるかわかりませんが、ブラックホールには表面がない、というのが重要になるかと思います。たとえば中性子星などに落下するガスを計算する場合は、「表面」があることを考えて境界条件を設定しますが、ブラックホールの場合は、吸い込み境界を置きます。 また、分子粘性は天体現象では無視できる場合が多いので、私が知っている範囲だとナビエストークスではなくオイラー方程式を解いている場合が多いと思います。

  15. お話の中でブラックホールの伴星の説明がありましたが、伴星を持たないブラックホールというのは存在するのでしょうか。
  16. 伴星をもたないブラックホールは存在するはずで「野良ブラックホール」などと呼ばれています。星と星の間にもガスはあるので、質量降着をしたり、ガスの運動に影響を与えるはずで、「伴星を持たないブラックホールと思われる天体」の報告もあります。数としては伴星を持たないブラックホールの方が圧倒的に多いと考えられています。伴星があると多量のガス(相手の星の気体)が降着するので、観測しやすく、また詳しく調べることができます。

  17. 昔のX線観測機器にはすだれコリメーターというものがついていて、方向を検知していたように思うのですが、時計の精度が上がったので複数の小型衛星の方が精度よく位置決定できるということでしょうか。
  18. 「すだれコリメータ」は、およその方向が分かっている天体の位置を正確に知るのに有効です。X線望遠鏡が登場する前に小田先生が考案され、「はくちょう座X-1」の位置を正確に決め、青色超巨星との連星であることが分かり、ブラックホールの質量も求まりました。 ガンマ線バースト(ブラックホールが生まれてガンマ線が出る)の場合は、事前に方向が全く分からないのでこの方法は使えません。そこで、複数の(超小型)衛星で視野を広くして待ち構え、時間差から位置を決めるという方法をとります。衛星はとても「高価」なので複数で待ち構えるのは以前は事実上不可能でした。最近になって比較的安価な超小型衛星が実現したこと、超小型衛星に搭載できるくらいコンパクトな読出し装置が登場したことから、可能となりました。

(2022年3月31日)